カールグスタフ m/45(Carl Gustav m/45)は、スウェーデン製の短機関銃である。第二次世界大戦末期にカールグスタフ・ファクトリーにて開発され、1945年にスウェーデン軍が制式採用した。スウェーデン語では単に「45型短機関銃」(スウェーデン語: Kulsprutepistol m/45)と呼ばれ、Kpist m/45と略称される。アメリカ合衆国では「Kライフル」(K-Rifle)や「スウェディッシュK」(Swedish-K)と通称された。

開発

スウェーデン軍が初めて採用した短機関銃は、フィンランド製スオミ KP/-31を制式拳銃FN ブローニングM1903と同様の9mmブローニングロング弾(9x20mm)仕様に再設計・国産化したm/37短機関銃であった。m/37は900丁ほどが調達されたが、さらなる需要を満たすべく、軍はナチス・ドイツのカール・ワルサー社と契約を結び、9mmルガー弾(9x19mm)仕様のMP35/1短機関銃をおよそ1,800丁、同じく9mmルガー弾仕様の拳銃をおよそ1,500丁調達した。MP35/1と9mmルガー弾は、制式名称m/39短機関銃および9mm m/39弾として採用された。これに合わせ、m/37の製造ラインは9mmルガー弾仕様に再設計されたm/37-39に切り替わり、さらに別途購入された500丁のフィンランド製KP/-31にはm/37-39Fの制式名称が与えられた。また、1940年にはアメリカ合衆国製トンプソン・サブマシンガンおよび.45ACP弾がm/40として採用された。この時点でスウェーデン軍は3種類の拳銃弾と6種類以上の短機関銃を並行運用しており、弾薬だけではなく交換部品などの調達にも支障をきたしていた。そのため、新たな国産短機関銃を開発し、これを一本化する必要が生じたのである。

第二次世界大戦中の1943年、生産性の高い短機関銃を求めていたスウェーデン軍は、フィンランドのティッカコスキ社からm/44短機関銃(ソ連製PPS短機関銃のコピー設計)を購入した。1944年9月、短機関銃の採用に向けた評価委員会が発足し、m/44およびハスクバーナ製試作短機関銃の評価が行われた。トライアルは陸軍歩兵学校(InfSS)およびカールグスタフ小銃工廠(GF)で実施されることとなった。その後、まもなくしてGFからも新型短機関銃の設計が提出された。最終的にGFの設計が優れていると見なされ、これがm/45として知られる短機関銃の原型となった。

なお、当時同じく新型短機関銃を模索していたデンマーク軍では、スウェーデン軍が採用を見送ったハスクバーナの設計案に注目し、これに小改良を加えたものを後にm/49短機関銃として採用している。

運用

スウェーデン軍では、1945年からAk 5突撃銃が採用される1986年まで、m/45を標準的な短機関銃として運用していた。1950年代のガザにおける国連任務、コンゴ動乱(1960年 - 1964年)でのコンゴ国連軍に参加したスウェーデン軍部隊で使用された。水中から取り出してもすぐに射撃を行うことができたので、1960年代から1970年代にはスウェーデン海軍のダイバーらにも愛用された。郷土防衛隊では引き続き運用されていたが、2007年には調達が終了している。

エジプトは第二次以降の中東戦争で使用し続けた。また、ポートサイド(Port Said)の名でライセンス生産され、エジプト軍に供給された。エジプトではさらにアカバ(Akaba)あるいはカラ(Kara)として知られる省力化モデルを設計している。このモデルでは銃身の放熱筒が廃止され、銃床はM3短機関銃と同型の伸縮式に改められていた。また、照門は固定式だった。ポートサイドの製造はアル・マアディ工業社(第54工場)にて行われ、1950年代から1970年代まで使用された。アカバは1970年代に入ってから設計され、ポートサイドを更新した。1981年に起こったジハード団によるサダト大統領暗殺事件では、多数のAK-47と共にポートサイドが使われたことが知られている。

ベトナム戦争中にはアメリカ軍でも使用された。Navy SEALs(アメリカ海軍の特殊部隊)で採用されていたほか、南ベトナム軍事援助司令部付研究・観察グループ(MACVSOG)では非合法越境作戦の折に国籍を秘匿するべくm/45を使用したという。m/45はアメリカ軍の標準拳銃弾ではなかった9mm弾を使用していたことに加え、スウェーデンのほか、エジプトやインドネシアでも製造されていたことから、仮に鹵獲されてもアメリカとの直接的な関係が示されない「滅菌済み火器」(sterile weapon)の1つと見なされていた。中央情報局(CIA)では、秘密工作用に何種類かの消音器付モデルが採用されていた。アメリカ軍で主に使用されたのは、改良型のm/45Bだった。そのほか、バードドッグ観測機の乗員なども、コンパクトで機内に持ち込みやすいm/45を愛用したと伝えられる。しかし、スウェーデン政府がベトナム戦争に批判的な姿勢をとった後、アメリカに対するm/45の供給は打ち切られた。1967年には軍部の要請を受けたスミス&ウェッソン社がm/45の代用たる短機関銃としてM76短機関銃を発表した。M76はm/45とよく似ており、また基本的な機能も共通していた。その後、アメリカ軍における特殊部隊用火器としてのm/45およびM76の役割は、XM177E1/E2へと引き継がれていった。

2022年ロシアのウクライナ侵攻以降、インターネットに流されるいくつの写真と動画がm/45短機関銃がウクライナ軍に運用されることを示してる。

構造

m/45はオープンボルト、シンプルブローバックの作動方式を採用している。部品は大半が肉厚の鋼板をプレス加工して製造したもので、レシーバーの上半分(円筒形)と下半分(箱形)は一体成型されており、耐久性は高い。銃身は穴あきの放熱筒で覆われている。コの字型の金属製銃床が付き、銃把の上下を支点に右方向に折り畳むことが可能である。

使用する弾薬は9mmパラベラム弾である。スウェーデン軍での制式名称はm/39弾で、朝鮮戦争頃には貫通力を高めたm/39B弾が採用されている。

初期型は先代の短機関銃であるスオミm/37-39用の50発箱型弾倉や71発ドラムマガジンを取り付けることができた。当初のm/45からm/45Bの最初期型までは、弾倉口が着脱式になっており、これを取り外すことでドラムマガジンを装填することができた。しかし、弾づまり不良が起こりやすく、装弾にも時間が掛かるなどの欠点があったため、後期型では弾倉口が固定式に改められ、36発弾倉が標準的に使われるようになった。安全装置はMP40などと同様、ボルト後退時はコッキングレバーを溝に引っ掛け、ボルト前進時はコッキングレバーを押し込む型式のものだった。照門は照準距離100m、200m、300mの3枚が重ねられており、m/37-39のものとよく似た形だった。フルオート連射のみ可能だが、連射速度は比較的遅いため制御しやすい。

主な派生型

m/45
初期型ではスオミm/37-39用の弾倉が使用できた。不具合が多かった為、後期型では1945年に設計された専用の36連発弾倉が標準装備となった。
m/45B
1954年に再設計された最終形。尾筒部分の固定方法が改良されたほか、放熱筒の強度を高める為に穴が小さくなった。
m/45C
m/45Bに着剣装置を取り付けたタイプ。パレードや儀仗の用途に用いられた。m/96小銃用のm/96銃剣のほか、海軍ではより長いm/1915銃剣を用いた。
m/45BE
スウェーデン警察用にセミ・フルオート切り替え機能を付与したタイプ。
m/45BET
スウェーデン警察用催涙ガス弾発射専用型。

主な採用国

  •  スウェーデン
  •  エストニア
  • インドネシア - ライセンス生産
  •  エジプト - ポート・サイド(Port Said)の名称でライセンス生産
  • アメリカ合衆国
  •  ウクライナ
  •  アルジェリア
  • 中央アフリカ - ポート・サイド版
  •  イラク - ポート・サイド版
  •  アイルランド
  •  ヨルダン - ポート・サイド版
  •  パラグアイ
  •  南ベトナム - 民間不正規戦グループ と ARVN
  •  ザイール - ポート・サイド版

脚注

参考文献

  • 床井雅美『オールカラー軍用銃事典』並木書房、2005年。ISBN 4-89063-187-9。 
  • 床井雅美『オールカラー最新軍用銃事典』並木書房、2013年。ISBN 4890633030。 

関連項目

  • 短機関銃・PDW等の一覧
  • 短機関銃
  • カルロ (銃) - パレスチナで密造された短機関銃。m/45を模倣しており、その通称も「カール」に因む。

外部リンク

  • SUBMACHINE GUN Carl-Gustaf - 国防産業社(FFV)が作成した英語版マニュアル

Carl Gustaf Submachine Gun M45 Manual

ArtStation Carl Gustaf M/45

Mattias H Carl Gustaf M/45

Mattias H Carl Gustaf M/45

Пистолетпулемет Carl Gustaf M45